森田療法・森田理論について


森田療法は、神経質症に苦しむ人のための精神医学的な治療(指導)法の一つとして、1920年頃に森田正馬博士(東京慈恵医大精神医学講座初代教授)によって考案されました。その過程で用いられる理論(以下、森田理論)は、われわれ神経質な者がより健康に、より豊かに日々を暮らすために大切となることをたくさん教えてくれます。

 

森田理論は、人間が本来与えられている生命力・心や体の回復力を最大限に発揮するために、また、人間としてよりよく生きるために具体的な毎日の生活(人間関係・仕事・勉強・レジャーなど)を、それぞれの立場や境遇の中で、どのようにしていったらよいかを示しています。

 

森田理論を心にとめつつ、生活を建設的に推し進めようと努めることで神経質症のとらわれが薄れていき、やがては克服されていきます。

 

森田理論は、神経質症はどんなものであるのか、また神経質症のもとになった心の仕組みに対する間違った見方や考え方を知り、今までの葛藤がどのようなものであったかを明らかにします。

 

そして、自分の本来の欲望は何かを知り、努力方向の軌道修正をします。

 

当面の行動の目標をつかみ、具体的に何をしたらよいのかを明確にし、今やらなければならない行動の反復によって神経質症的な感情のクセに代わる建設的・発展的な感情を習慣づけていきます。

 

例えば不安神経質症の場合。心臓麻痺や腹痛などの急な体調悪化、閉鎖環境や事故などを恐れていたりすると、電車に乗って遠くへ行くのが怖いので、だんだん逃げてしまいます。こんな時に、森田理論では怖さをなくしてから電車に乗るのではなく、怖さはそのままに、まず電車に乗ることをすすめます。電車に乗って目的地まで行き、必要な用件を果たす。その時の電車に乗れた喜び、用件を果たした満足感を大切にします。このような態度を繰り返し、さらには他の物事にも拡げていくことで、しだいに気分はさておき自分のやらなければならないことをおこなっていくという、実質的な態度が養われていきます。

 

森田理論は、現代に生きる人々に柔軟な考え方と生活の仕方を示し、ストレスに負けることなく強く生き抜いていくための力を与える役割を果たします。